にとりメタモルフォーゼのウラバナシ1

かなり間が開きましたが、この間の例大祭19はいろいろありがとうございました。コロナ禍でもイベントはそれなり参加してたんですが、今回の来場者は以前のそれに近くなんとなく懐かしい感じでしたねぇ。

そして以前から暖めてた漫画「にとりメタモルフォーゼ」がついに完成し、手に取られもらわれていきまして、そこんとこもどうもありがとうございました。てことで、最近やってなかったですが書き上がるまでの色々を書いていこうかと。

長かった

このにとりメタモルフォーゼですが作品のボリュームがすごかったんですよね。ページ数は40pで、次点「いがいと」のページ数をダブルスコア級に更新してます。みとに「もうお前は独り立ちしたんだ。俺の本に寄稿なんかしてないで自分で本出せ」と祝福されました。たまには一緒に描かせてな。

あと完成までの期間も長かったでした。後述ですが初版の未完成版(とは当時言ってなかった)が2019年10月に完成。この時点で既に1年半前っていう。この期間はコロナのせいですがね。

さらに書き始めで言えば、1ページ目のデータの作成日が2016年9月とのことで、5年半前という…うぉ…。しかもうちの場合、シナリオが全て固まらないと絵を描き始められないのでさらに前から作成してたわけです。どんだけ長丁場だったんだと。
ただ、最初はそのうち機会があったらぐらいの感覚で描いていたようで2016年中には8ページ、2017年にはなにもせず、2018年には11ページまでぐらいしか描いてませんでした。これは自分でも忘れてた。
で、2019年には比較的のんびりした職場に異動しまして、みとがイベント申し込んだけど出すものないみたいなことを言っていて「じゃあこれを仕上げるか」と描き始めたのが2019年6月なんだそうです(←忘れてる)。そこから3ヶ月強で38ページ突っ走ったわけですね。
足掛け5年の本だと3ヶ月って短い感じですが、3分の2を休まず描き続けたわけなので果てしなく長い日々でした。

ちなみに、間に合わなそうな時は自分用に作業工程表を作ったりするんですが、初版の時イベント1ヶ月前にそれを感じたようで作成していました。青が最初立てた予定。赤が実際の進捗です。

出来が均質になるように、下書きを全て終わらすまではペン入れしないようにしてたんですね。飲みに行ったりつい寝ちゃったりしてる日もあるけどほぼ毎日描いてたんだなぁ。
この表で自分にムチを入れるの、うちの場合結構向いてるなーと思ってまして「後ろを見通したらこれ以上ペン入れしてられない!」「印刷を逆算するとトーン貼れない!」「とりあえずセリフ入れないと漫画にならないからセリフからやるぞ」みたいなのは残日数を数えてるだけではできなかったと思います。これおすすめだよ。みんなも使ってみてね。

てことで。初版はトーンを貼れてなかったのです。
38ページ分のペン入れ2週間半はやっぱり無理だった。最初から無理だとは思ってたけど逆算するとそれだけしか確保できなかったから…。
とはいえ3週間でペン入れを済ませ3日分の遅れをトーン貼らないことで間に合わせるしかなく、やむを得ず真っ白で印刷した感じです。
まぁイベントに本を出すのが大前提なので正解といえば正解だったんだろうなーと思います。

線が太い

今回、ページ数がとっても多くペン入れだけとっても苦労するのが予見されてたので、あまり細かいところを気にしないで描けるよう線を太くしました。もともと繊細な線を引くことを諦め少し太めの線に切り替えてた時期だったっていうのもありますが、細かい書き込みができない→ちょっとアバウトでも平気→一つの絵に固着せずどんどん次の絵を描けるようにという狙いもありました。
ちなみに先の太さを探るために先行で描いたにとりがこちら。

この絵はデータの変更日が2016年9月になってました。描き始めたのと同時期ですね。
これぐらいじゃないと書き込みたくなっちゃうってのもあるんで妥協点の探しやすさ的にはちょうどよかったんでこんな感じで行こうってことにしました。

本が出来上がって知り合いに見せたら「ここまで線を太くする勇気はないなー」と言われました。うちも太いなーと思ったけど、この太さじゃないと完成しなかったかもしれないんでまぁいいかなーなんて。

ストーリー

ストーリーはあとがきにも書きましたが東方鈴奈庵のとあるストーリーを改めて解釈して膨らませてみた感じです。一つ前の本「いがいと」も同じ方法で考えたストーリーですね。

ちなみに「いがいと」は2018年6月に発行した本ですが、ストーリーに関しては「にとりメタモルフォーゼ」の方が先に完成してたりします。「いがいと」は小鈴オンリーに出るって話が決まってから作り始めた作品で、2018年上半期はこちらにリソースを割いてたので、にとりメタモルフォーゼが進捗してなかったっていう。

話を戻しまして。
鈴奈庵のストーリーにかすめなくてもにとモルは成立するんですが、それでも鈴奈庵準拠にしたのは、あの背後でこんな事が同時に起きてたら面白くね?と思ったってのが表向きの理由。
あの教室で慧音が先生をしてる描写はあるけど霊夢達と会話をしてるシーンがないんですよね。どちらかというと妖怪側である慧音が妖怪が紛れ込んだ教室で普段どおり授業を続けるなか何を思っていたかを考える余地が残されていたのでこういった展開をしてみました。

メタい理由としては、生産力が低いのでページ数を増やしたくなかったため、すでにある程度の人が読んでるであろう商業作品に省いた部分とか説明が足りなかったところを補ってもらおうと思っていたのも一つあります。
鈴奈庵をどれだけの人が読んでるかってのはあまり考えてなかったですけど、読んでる人なら事件の最中も子どもたちは結構平気そうにしてた様を知ってる。うちの作品では描かなかったけど、みの(にとり)が気にするほど子どもたちは事件のことを気にしてないってことが伝わるかなーと。

ただ、気づいたらモブキャラ比率がすごく高くてちょっとなーと思いながら描いてました。
これ東方でやる意味ある?と言われたら、「にとりでやる意味があるから東方でやる意味はある」と言い切れるつもりだけど、うち自身モブキャラが多い作品があまり好きじゃなかったんで描いてる最中はちょいちょい葛藤ありました。
いやだって東方キャラ全然出ないページ結構あるんですよ。これでいいのかなぁ…東方でもなんでもないのでは…とか結構思ってた。でもストーリーも最後まで作ってコマも最後まで割ってあるんだし描かないともったいないなと切り替えて書ききりました。
ちなみにモブキャラたちはオリジナルではなく鈴奈庵のモブで描きました。てことで、の謎のモブキャラたちも一応東方二次創作と言えなくもない…いや言えないか。
まぁなんにせよ、次があったらオリキャラは最小限にしようと思います。

全体の進行とかペース配分

漫画を書き始めるにあたって、うちの場合セリフを書き出して1コマに描きたいセリフを一行にしたテキストを作ってます。今回だとこんな感じで。

040 椛「私が見える範囲だけかもだけど、ここ最近は妖怪の動きが活発になってきてる。各々がどういう目的で動いてるかはわからないけどね」
041 に「私はただ人間と…」椛「べつに疑ってるわけじゃ無いんだけどさ」

40コマ目、41コマ目にこのセリフにしたい、と。この後コマを起こす際に文字が多いなとか、このコマはページめくった後にしたいなとか考えて微調整が入り、実際上のセリフは42,43コマ目になってます。
で、全部で165コマまでありました。多すぎ!!

これでも削った方なんです。テキスト段階では、慧音との会話はもっと細かくされてたし、鈴奈庵に出てきた偽魔理沙と会話するシーンとかも考えてたし、にとりが登校拒否になる部分も寺子屋視点でしっかり描こうとしてたし、にとり=みのだと発覚するシーンはもっっと丁寧に描くはずだった。全部書いてたら50ページ超えてただろうなぁ。
いろいろカットしましたが各々の心情を丁寧に書きたかったんで、そこをおろそかにしないよう残す部分は残してああなりました。
ちなみにカットシーンとは別に没シーンとして、真犯人が見つかってからにとりが転校するストーリーとか、吊橋で会ってちょっと会話しただけでにとり=みのとバレてしまうストーリーとか、現エンディング後実際遊びに来るストーリーとかも考えてました。どちらも登場人物の行動や物語が不自然だったりして書きづらかったんで没にした感じです。タラレバ的には面白いかもだけど今のストーリーに落ち着けてよかった、と今読み返してみて安心してしまいました。

そんなことよりなにより最後のあたりの展開、さわやかに描けてると思いません?
ほんとはあとがきに描くつもりだったんですが、あれTAGRO氏の漫画「マフィアとルアー」に完全に影響されてます。ていうかほぼ一緒です。
なんていうかね、マフィアとルアー絶対読んでほしい。TAGRO氏、有名なのだと変ゼミの作者さんなんですが、マフィアとルアーはそれより前に一話完結で雑誌に載ったりした漫画を集めた本なんですね。今は電子書籍でも売られてます。でマフィアとルアーはその本に入ってる作品の一つ。
どこの電書でもいいんだけどDLsiteのリンク貼っときますね。
この方、場面転換とか物語の進め方が巧くて、特に漫画じゃないとできない表現、動く絵じゃできない表現を突き詰めてると思うんだ。動かない紙面でこれほど絵の動きとか感情の揺れを表現できるのか!と高校生だか大学生の頃驚いた記憶があります。
で、マフィアとルアー。裏切られた過去の回想と、鬱屈とした感情のままふらふらとたびに出た現在を同時に進行させつつ、過去は深夜から明け方、現在は朝から夕方に時間が進んでいき、旅先の出会いによって過去を割り切るシーンがとっても爽やかで、大きいコマで夕方の広い空が描かれるんです。さわやかだなぁ。気持ちいいなぁ。こんな漫画描きたいなぁ。──ってことで描きました。

ウラバナシ長すぎ!! でも書きたいことまだあるんで後編に続くってことで今回はおしまい!!

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