いがいと

例大祭レポブログを3ヶ月かけて書いたところで、次はさらに昔の去年7月に松阪のイベントで頒布した本の色々をいろいろと。
ほんとは去年の松阪のイベント直後に書きたかったんですが、プチオンリーで頒布しただけでブログでメタい話を書くのもなーと思って、東京頒布を待ってから書こうと思ってたわけです。よーし頑張って思い出しながら書くぞー。

きっかけ

2016年2017年辺りはすばらしき青空の会3人とも執筆意欲が低空飛行気味だったんですが、松阪のイベントにパリさんと行くことが決まったぐらいから、サークル内での執筆意識がやたらに向上してたこともあり、うちも久しぶりに単独で本をだすかーってことになりました。
ちなみにこの本が3作目だったんですが、1,2作目の本はなかなか手にとってもらえない、買ってもらえないでして「これは根本的な所が間違ってる。本を出すことばかりに囚われずに手にとってもらえない理由を見つけなくては」と思って以来なので、ちょっと間が開いていて数年ぶりの本だったりします。

構想とか

ちょうどその頃暖めてたにとりと小鈴の長編があったんでそれを…と思ってたんだけど、あまりのボリュームに完成の目処がたたなすぎて4月に断念&転換。あまり長くならないいつもどおりの感じの日常モノっぽい内容に方向転換し、あの内容になったのです。
東方鈴奈庵のアナザーストーリーっぽさを割と前面に押し出してましたが、ちなみに断念した話も鈴奈庵のアナザーストーリーでして、むしろいがいとは鈴奈庵の話から膨らますっていう先入観を持ったまま描いてたんだな、と。
それにしても描きたい長編がどんどん貯まってくこの感じ。うーん。いやまぁ描けばいいって話なんですけどね。

表紙!! (よんちのパーフェクトひょうしレイアウトきょうしつ)

表紙ですよ! 表紙!
今回の本はちょいちょい新しいことをしてみてたんですが、この本の中で表紙が一番こだわって描きました。
先述のとおり、今までうちが描いた本は手に取られづらい表紙だったんですね。おそらく。
どれもそんなテキトーに描いたつもりはないのに…と当時は思ったんだけど、そんなさなか足を運んだいつだかの例大祭で気付いた。その会場内には5000のサークルがいて、来場者のだいたいはその日の5時間を、まず並んで買えるかどうかも分からない大御所にいくつも並んで、顔見知りの中小のサークルに寄るにしてもそういくつも回れるわけはなくて、そんな人たちが目的地への道すがら目に入った本を買うかどうかというとかなり難しい。そう買い手の心理を完全に忘れてた。
うちの場合固定客はおそらくいないので、どうしたら通りすがりさんの目にとまるかを考える必要があった。

てことで唐突に始まるパーフェクトきょうしつ!
パーフェクトきょうしつシリーズとは、元ネタのIOSYSのあれの如く、言ってる本人のドヤ顔に反して全然パーフェクトじゃないメソッドとか勝てない必勝法みたいなのをだらだら書くシリーズだよ。ちなみにシリーズって言うほどないよ。

[1]周辺視野状態でそこに本があることが認知できるか。
テーブルシートと同じ色だと本があることに気付けない。ごちゃごちゃした表紙はじっくり見れば色んな情報が分かっていいかもだけど、通りがかりさんにはそこまで見てもらえずスルーされる。
なのでレイアウト、背景の描き込み具合、全体のまとまりは作業の要所要所で確認しながら描くといいです。
できたら印刷してイベントで使うテーブルシートの上に置いて1mぐらい離れて見てみる。自分の本とマットとの境目がよく分かんなかったり自分の本の存在に気付けないようだと危ないかも。目が悪い人は裸眼で見てみるといいかもです。

[2]どんな絵を描く人の本なのかがすぐわかるか。
絵の好みが合う人に見逃されたらもったいないので、自分の渾身の出来レベルの絵を表紙にしましょう。
ほらセル画時代のアニメだってOPとEDはめっちゃ丁寧に書き込まれてるけど本編はカクカクだったりするじゃないですか。毎週の中身はスケジュールとか予算に追われちゃうんであまり丁寧に描けないけど、毎週使うOPとかEDはそのアニメの看板だし丁寧な絵でしかもぬるぬる動くってことだったそうです。渾身さを押し出すあまり自分の絵から離れちゃうと嘘になるんでだめだけど、絵で本を買ってく人って多い気がするんで重要だと思います。
あとレイアウトにこだわるあまりBadAppleよろしくシルエット絵にしちゃうとか、口元だけをアップにした絵とかってのは、デザイン的には面白いし中身にリンクしてたりすると感心しちゃったりもするんだけど、それは常連さんがたくさんいたり表紙とは違う絵のポスターとかを貼りだすならともかく、本だけで勝負をする時はおすすめできません。

[3]素人っぽさがないか。未完成さがないか。
ボールペンで適当に描いて消しゴムかけてないコピー本とか、虹色でRかかってるワードアートみたいなタイトルだったりとかすると、ものすごく不安になっちゃって気になっても近づきづらいと思うことがあります。ボールペンで描くことはいけなくないんだけどね。ツールにこだわれってわけじゃないんですが、通りがかりさんの中に未完成な本だと認知されちゃうと、サークル数が多い都心のイベントだと敬遠されると思います。
迷い線はちゃんと消す、色はひととおり塗る、できたら活字にも気を遣う、その辺を及第点付近までやって、通りがかりさんの興味を遠ざけないようにできるといいです。

などなど、うちが今までイベントでふらつきながら「これは目にとまった、本欲しくなっちゃうなー」とか「多分いい絵なのに目立たなくてもったいない」て思ったポイントをまとめてみました。
もちろん、それなりに常連さんがいたり事前にTwitterとかで中身のサンプルを広く見てもらえれば表紙なんて関係ないんだけどね。逆にあえて通りがかりさんに立ち止まってもらわなくてもそれなりの部数が出るサークルなら、むしろ細かく描き込まれた表紙の方が豪勢さとかお得感につながったりよく見ないと気付かない新たな発見を埋め込めるだろうし、「靴と素足だけ」とか「石畳に写った誰かの影だけ」みたいなどんな絵だか一切うかがい知れない表紙でもオシャレ!って言いながら売れてくでしょう。なので話半分にね。

さて脱線しましたが、うちはもちろん常連なんて多分いない弱小未満の作家なので、以上の内容を意識した表紙にしました。登場する人物が全員出てくる。ごちゃごちゃしてない。色塗りにテクスチャをプラスしちょっとデザインチックに見えるようにした(実はこの効果は副産物でこれについては後述)。イベント当日では、割と真っ先に手にとってもらえてて嬉しかったです。

中身

ストーリーの着想は上で書いたとおりですね。いつもどおりの思いつき。
最初のページ構成時点で2ページ間違えちゃってたんで、なんとかあと2ページ増やさないといけないってことに原稿作業のかなり終盤に気付いたんですが、没にした1本を復活させ、1本を急こしらえで作ってどうにかさせました。
ちなみに復活させたほうの漫画のオチはちゃんとみんなに分かってもらえたのか心配なんですがどうでしょう。心配ついでにばらしちゃうと、小鈴が食べたのは尻小玉だったのです。分かりました?

あとできあがった本を設定とか原作考証にこだわりがある知り合いに見せたら、にとりがきゅうりの本の印刷を頼んだ後の話だから、小鈴に対するにとりの初々しい反応がおかしい、人間好き設定を推してくなら尚更矛盾が。とのことでした。まー描いてる最中に気付いちゃってたんですがね。本を出すと決めたイベントに本を出さないわけにいかないし気にしないことにするしかなかったってのが実際の話でした。今度から気を付けます。

作画については、メディバンペイントで線引いてトーン貼って、イラレで吹き出しと活字作って、フォトショで結合させて書き出しっていう最近の定石でしたが、今回はメインキャラに縁取り線を付けてみました。
同人始めたての頃、今ネットにある作品だと三寒四温秋雨最前線の頃に試行錯誤でやってた線の強弱をアナログにかけた絵が今でも気に入ってて、ただ作画に時間がかかりすぎるんで、それ以降にこの描き方で仕上げたことはなかったんですね。ただやっぱり線の抑揚の無さをなんとかしたいと思ってたんで、ただの縁取り線を描く方法で復活させてみました。上で挙げた作品とは似つかない出来ですが、選択範囲の拡張→塗りつぶしでできるので手間は圧倒的に少ないです。なので労力からしたらこんなもんかな、と。
見た目の雰囲気は自分でもかなり好きな加工なので今後もしていきたいですねー。といってアキラ合同では時間がなく省いてしまいましたがね。

あとトーン。特徴ある柄トーンを使ってみました。線が全て引き終わってから表紙を仕上げてその後にトーン貼りを始めたんですが、表紙の時点で進行がかなり遅れてて、着色で細かい陰影をつける手間を省くため柄トーンで塗ったのが始まりだったりします。
密かな狙いどおりオシャレな雰囲気を多少かもせたし、中身のモノクロページも同じ柄を使ったのでトーンに悩まなくてすんだし、影付けもしなくてすんだけど、中身については柄トーンの方が手間が多かったので時短効果はほぼなかったでした。
ちなみに印刷はいつものプリンテックでした。紙を色々と企みたかったんですが時間の都合であまり冒険せず、中身は文庫本の黄色い紙、表紙はちょっとラメの入った紙にしました。印刷した部分はラメが負けちゃったんでいまいち期待した効果は上がりませんでした。
あとLifeis…の時はオフセット印刷でしたが、今回はオンデマンド印刷にしました。安かったですし。

といった感じの本でしたねー。 去年7月の鈴奈幻想絵巻と今年5月の例大祭で出しましたが、おかげさまでこれまでとは比べものにならない部数を頒布できました。まだもうちょい在庫あるんで見かけた際はよろしくです。

ちなみに上で書いた没にした長すぎる話は、間に合わない気もするけど秋季例大祭目標で鋭意制作中です。なんか40ページぐらいになりそうなんですが、まだ下書きが15ページぐらい残ってて、表紙も中身もなにもできていないっていう状態で残り5週間は諦めた方がいいのでは?と思わなくもないけどね。
とはいえ、後で否定するのが面倒だから不確定な情報は出さないタイプのよんちさんがこのタイミングでこんなこと言うわけだから、それなりに本気で作業してます。続報をご期待くださいなー。